![]() 映画を観ないとなんにもアイデアが浮かばない(と思い込んでいる)自分は、激務の合間を縫って無理矢理に映画館に深夜2時とかに行くもんだから、うっかり『カイジ2』なんかを観て、ややげっそりして仕事に戻っていくという、端から見ると謎の行動ともとれる悪癖があるのですが(←そこまで卑下しなくても。。)、それでもやっぱりいい作品に出会うことのほうが多いし、勇気と知恵と閃きと安らぎをもらえるのだから、止められない。 公開後数日なのに650席ほどの劇場に約20人という贅沢な空間で観た『マネーボール』は、勇気と知恵と閃きと安らぎで涙した一本です。 これ全く野球映画ではありません。 良質の会話劇。あくまでもクールに、ドライに展開する丁々発止の会話劇、まさしく“孤高”の戦いを続けるビリー・ビーンの半生を的確に脚色していい具合に作り物にした伝記映画。 この映画、素晴らしい出来映えなのは、アーロン・ソーキン脚色によるところが大きいと思います。あのソーシャル・ネットワークの脚色を手がけたこともそうですが、そもそもこの人、法廷会話劇の傑作戯曲『ア・フュー・グッドメン』の作者にして、映画版の脚色も担当した人なんです。だから会話劇の緊迫感や濃密っぷりは大得意。『マネーボール』でも適度に冷めつつも、登場人物たちの会話の妙で物語をぐいぐい引っ張っていきます。 ま、途中、ドライになりきれずに、娘からのパパへのレンカの佳曲『ショウ』の弾き語りという反則技で強引に泣かせにかかりますが、名シーンなので普通に半泣き。 そしてクライマックス、ある計算に基づいた起用というものを、フィリップ・シーモア・ホフマン扮する頑固監督が試してみた時、それが、スポーツにはままある奇跡と結びつき、号泣。 あと、ブラピがまんまロバート・レッドフォードだ。 なんですが、それ以上に、ライムスター宇多丸氏がザ・シネマハスラーで指摘していたように、会議室に新スタッフを連れて乗り込むシーンではっきりと感じ取れる、ブラピ・ビリー・ビーンのあれ?ちょっとこの人ヘン?コワいけど、でもなんかカッコいいな、という孤高の革命者っぷりが、『ファイトクラブ』のタイラー・ダーデンっぽい。というか、タイラー・ダーデンだ。 みんな大好き、みんなの憧れタイラー・ダーデン。 最近、諸々の事情で孤独感に苛まれることしばしばの自分にとっては、そういう意味でも勇気と閃きをもらえた最高の一本でした。 『The Show』 / Lenka 発想の飛躍がアホらしくて感心してしまった映画を三本。
あ、あらかじめ断っておかないといけないことが。 ごくごくまれに、当ブログの拙文で映画何観るかの参考にしてくれているという、非常に非常にありがたい言葉をかけてくれる人がいるのですが、そういう素敵なみなさん、今回ばかりは観るかどうかの判断を慎重に慎重にお願いします。 なるほどおもしろそーじゃねーかと、試しに観てみてそのあまりのとんでもなさに、烈火の如くたぎる怒りをぶちまけられても完全に無視しますからね。At your own riskで夜露死苦機械犬。 ![]() 『スカイライン -制服-』。 オーソドックスな宇宙人侵略もののふりしてるけど、ラスト15分とエンドロールの展開がとんでもなくて、無茶苦茶で、唖然呆然大爆笑。これはこれで、なにか作り手の心意気を感じないでもない、ある意味チャレンジしてる映画。もしくは、本当はもう一時間ぐらい続きがあって、むしろそっちの戦いがメインだったのに、サマーセーター肩にかけた大人に思い切りダメ出しされて刈り込んだ結果なのかもともとれる、はちゃめちゃなエンディング。続編を熱望。 ![]() 『ムカデ人間』。 「この映画は人と人との繋がりを描く作品なのです」と大真面目な顔で資金集めをしたという、一応その言葉に偽りなしなマッドサイエンティストもの。非常に気持ち悪い空気が充満している映画。でも、繋がってる姿は気持ち悪いというよりは、気持ち良いんじゃないかと思ってしまうぐらいの、画づらが完全にスリーサム(いや、4Pかな)なエロムービー。といってもやっぱり気持ち悪さが強烈らしく、劇場では、うげっ!とばかりに勢いよく席を立ち、猛スピードで出ていったきり戻ってこなかった人が数人いました。というわけで、人によっては完全にムリ、な類の作品だと思う。それでも!世界中でヒットして、続編完成間近。しかもトリロジー化まで決定。ムカデの先頭が日本人ってのが、いかす。 ![]() 『マーターズ』。 少し前の映画だけど強烈なインパクトはいまだに鮮明。『ムカデ人間』で笑えたのは、この作品を観ていたからちょっとやそっとのマッドサイエンティストぐらい屁でもないと思えた、というぐらい徹底的に狂ってるサイコさん映画。 人体実験(というかただの拷問)の意味不明さとえげつなさは絶品。ヨーロピアンホラーのスーパーノヴァ。ただ、実は映画としても素晴らしくて、前半と後半で鮮やかに転調する物語や、クールで雰囲気ある映像など、けっこう凝った造りの作品。サイコ方面でここまで無茶苦茶しちゃうと、直視できない人のほうが多いだろうなってのが残念。 必見(できれば)。 このように、世界には、あらゆる困難に立ち向かい、自らのイマジネーションの具現化に邁進する、素晴らしいアーティストがたくさんいるんです。最敬礼! なんて、それらしくまとめてみたけれど、一言でいうと、エロ(『ムカデ人間』)グロ(『マーターズ』)ナンセンス(『スカイライン -制服-』)、です。 『どうかしてるよ』 / 岡村靖幸 ![]() もう一回観たくてしょうがない、DVD発売が待ち遠しい『ブラック・スワン』。 ダーレン・アロノフスキー節炸裂しまくりの作品がアカデミーを穫ったということがまず嬉しい。 物語は、筋があるようでないような、一人のバレリーナが重圧を感じでオロオロしてるだけというシンプルなお話なのに、さすがのテンションで緊張感を持続しつつ、起伏豊かに一気に見せます。 観てる最中からいろんなことを感じて、本当にそれはもういろんなことを、たとえば、ナタリー・ポートマンの練習着や普段着が可愛いとか、そんなどーでもいいことまで楽しめるぶ厚く深い映画(とバカみたいに軽い例しか挙げることができない自分)。 一番強烈に思ったこと。 ナタリー・ポートマン演じるニナが、自分の表現を追求し夢を追い求めることで(それだけが原因ではないことは映画を観れば明らかですが。。。)、精神に異常を来してしまったんだとしたら、それはちょっと羨ましい。 僕はそこまで自分を追いつめることができるだろうか?表現者として自分は狂えるだろうか?きっと無理だろうなあ。現にいままでそうならずにここまできたのだから(と自覚はしている)。 だからちょっと羨ましくなった。 DVDが発売されたら、自分はまだニナを羨ましいと思うのかを確認したい。 『Shine On You Crazy Diamond』 / Pink Floyd ![]() 『モンスターズ/地球外生命体』。 なんという煽りに満ちたタイトル(と日本版はロゴデザインも)。しかもシアターN渋谷で公開。となると、バイオレントでハチャメチャで、かつグロかエロかナンセンスか、またはそれら全部をぶっこん だSFクリーチャー映画の怪作を期待してしまいますが、そんな映画オタクの単細胞な妄想を鮮やかに裏切る切ないラブロマンスの快作でした。 劇場内はまさしくシアターN渋谷って感じの客層で、“地球外生命体”なんて、なんか微妙なタイト ルと相まって、激務で萎んだクリエイティビティやモチベーションを刺激することが目的だった連れは非常に困惑&心配している様子でしたが(隣でやってる『スーパー!』にしよーよーという空気びんびんで)、見終わったあとは絶賛といってもいいぐらいの興奮ぶり。 僕も、良い映画、素晴らしい才能、キュートなヒロイン(個人的好み)の誕生に、かなり興奮しまし た。 この作品でハリウッド進出のチャンスを掴みとったイギリスの俊英ギャレス・エドワーズのデビュー作。美しい画作り、繊細な演出、大胆なクリーチャー起用。僕と同い年ということもあって、すっかりファンです。これからが楽しみです。新『GODZILLA』の監督に決まってるそうですが、どーせなら宙ぶらりんな『クローバーフィールド』の続編を任せれば良いのに! (というか、ここへきて、『モンスターズ/地球外生命体』って『クローバーフィールド』に似ている気がしてきた。。。だから面白かったのか) ところで、切ない恋を演じた主演のスクート・マクナイリーとホイットニー・エイブル。この二人、元々恋人同士で、映画公開後に結婚したようです。なんかいいですね、そういうの。 『Scary Monsters (And Super Creeps)』 / David Bowie ![]() ![]() 『Scott Pilgrim vs. the World』と『Sucker Punch』です(クソみたいな邦題がつけられているから原題でいくぞ。←おっと失礼、でもホントのことだから)。 これぞ、ナードのナードによるナードのための映画という二本。 僕実は、、、って、あらためて言うほどでもなく、もうすでに友人からは“オタク”であり“ゲーマー”であるという認識なんだけれども、それでも、まだそのへんのところ知らない人からは、ガラのやや悪い見かけによらず、と一応意外がられるナードちゃんです。ただ、分別のあるナードちゃんなので、『Scott Pilgrim vs. the World』や『Sucker Punch』のような映画を誰彼かまわずオススメする、なんてことはしないです。 そう、この二本の映画はそういうひじょーに観る人を選ぶ映画で、動員にもモロその影響が出ていて、あんまり成功したとは言えない感じです。たぶん、スタジオからは大失敗という評価だと思う。 ザック・スナイダーの『Sucker Punch』は『ウォッチメン』が素晴らしく、大成功したから、間違って観に行っちゃった人がたくさんいたかもねー。そして大きなクエスチョンマークとふさがらない開いた口で隣の彼や彼女と顔を見合わせたことでしょう。それはしょうがない。だってわけわからんもんね。 『Sucker Punch』観る時はあんまりいろいろ考えちゃダメですよ、まずね、『ソウルキャリバー』かなんかを徹底的にやり込んで、『アーマード・コア』か『フロントミッション』あたりにも手を出してから観ると良いと思うよ。そうするとしっかり楽しめます。要するに格闘ゲーム的な感じで物語に重きをおかずに、破壊と進撃を楽しめば良いのです。って、そんなもん楽しくないという人が大多数だというところにこの映画の興行的失敗の原因があるんですが。 でも、なんとか頑張ってストーリーを追うと、『17歳のカルテ』のようなものすごく重い話だってことがわかって、それはそれでけっこう楽しめる。 ヘンな映画観たい人には超オススメ。 ほとんどの人が『Sucker Punch』以上に開いた口がふさがらないであろう困った映画が『Scott Pilgrim vs. the World』。でももしかしたらちょっと救いなのは、この映画原作の時点で完全にナード向けだし、監督のエドガー・ライトはタランティーノ以上にオタクな作風で、『ショーン・オブ・ザ・デッド』と『ホット・ファズ』の二本が好きな、僕のようなエドガー・ライトファンが劇場に足を運ぶだろうと予想されること。なんて思って劇場行ったらガラガラ。ダメだ!これは全くヒットしない!! 大きなクエスチョンマークとふさがらない開いた口で隣の彼や彼女と顔を見合わせる人たちすらいないまばらに埋まった劇場内。それはしょうがない。だって無茶苦茶わけわからんもんね。 『Scott Pilgrim vs. the World』観る時はあんまりいろいろ考えちゃダメですよ、まずね、『ストⅡ』かなんかを徹底的にやり込んでから、『MARVEL VS. CAPCOM』を心から楽しめるようになった頃合いを見計らって観ると良いと思うよ。そうすれば自分のようにユニバーサル映画のジングルの時点で拍手喝采です。要するに格闘ゲームな感じで物語に重きをまったくおかずに、ゲームショップで物色がてらデモムービーを見てる感じで楽しめば良いのです。って、そんなもん楽しくないという人が山ほどいて、それが普通だというところにこの映画の興行的失敗の原因があり、いやそもそもあってないような物語を考えると、これよく公開できたなーぐらいに不思議な作品。 でもね、映画が始まる前、懐かしのドット画で描かれたロゴマークと8ビット・サウンドに処理されたユニバーサル映画のジングルで興奮したりわくわくしたり愛をこめてバカにしたりできる人なら確実に楽しめる一本なので、そういう人に激しくオススメです(そういう人が見当たらないのが悲しくも、そんなヤツいたら嫌だなとも思う。まあ、自分がそうなのだけれど)。 “音と映像の遊び”という点においては傑作、かも知れないので、ヘン過ぎる映画観たい人には激烈にオススメ。 ところで、エドガー・ライトの『ホット・ファズ』。 これはホントに必見の傑作ですからね。 『ハート・ブルー』!!!(そして多くのハリウッドポリスアクション映画)と『オーメン』にオマージュを捧げられた英国製コメディサスペンス映画。(←すでにわけわからん。でもホントに面白い!) 『 The Nerd』 / DJ Spooky ![]() ひと月前の13日の金曜日。夜を徹してのデザインワークののち、晴れやかな気分で迎えた13日の金曜日。無印に着替え買いに行ってシャワー浴びて、中打ちあげとばかりに早仕舞いしてデザイナー(といってもこの人もアートディレクターなんですが、今回は僕がAD、この人がDということでタッグを組ませてもらいました)と一緒に三軒茶屋へ。 初イキウメ。 ずいぶん昔にCaution!編集長(現Choice!たぶん編集長)からオススメされていたのに何となく月日が過ぎてしまい早4年。同時期に教わったヨーロッパ企画は、主宰の上田氏に取材した時にひらかたパークでやや盛り上がりしたこともあってか、すっかりファンになり、新作もできる限り観に行ってます。そのヨーロッパ企画と同じぐらい編集長オススメなんだからイキウメだって良いに決まってるのに、逸機しまくりで自分の機動力の貧弱さを反省しつつ、やっと観に来れたと満足しつつ開演。 宇宙人(のようなもの)による地球侵略とそれに抗う人間たちの物語を、巧みに構成された群像劇として見せる人間ドラマで、わりとストレートに“愛”をテーマにしていて、とても感動的なお芝居でした。クライマックスでは、客席から鼻をすする音がちらほら聞こえていましたよ。 お話もさることながら、セットも小道具も作り込まれていて、しかもそれらはすべて真っ白に塗りつぶされているという不思議な空間で、それが素晴らしい効果を上げていました。全く違う場面のセットや小道具が混在してるのに、白一色の世界がこちらの想像力を刺激し、僕らの頭の中で補完しながらシームレスな場面転換が行われ、シアタートラムがいつの間にかものすごく広く大きく感じるという、そういうカタルシスもあったりなんかして。 イマジネーションに溢れていてすごく良かった。 小説版があるので、興味ある人はぜひどうぞ(読み終えたら僕に売ってください)。 しばらくぼんやり、三茶うろつき、オイスターレストランで牡蠣を食べながら、芸術に撃ちぬかれた身体を再起動して帰りました。美味かった。 『INVASION』 / Danny Elfman ![]() ボストンが舞台ではないけれど、同じマサチューセッツ州のローウェルを舞台にしているので、町の持つ空気は『ザ・タウン』と似ているものを感じるのが『ザ・ファイター』。 そして、中盤から終盤にかけては『ザ・タウン』以上に都合良く、これ以上無いというぐらいに美しく物語が展開していく『ザ・ファイター』。 だってしょうがないじゃない、実話なんだから。 地元ではいろんな意味で“有名”で“愛されて”もいたボクサー、ディッキー・エクランド。その兄の背中を追いかけたり、そこに隠れたりしながらボクサーとしてのトーレニングを地道に積む弟ミッキー・ウォード。過去の栄光にすがりドラッグに溺れながらも、ボクシングと弟への愛情を燃やし続ける兄と、その愛を力に自らの道を切り開いて世界ランカーにまでのぼりつめる弟の物語。 『ロッキー』のように馬鹿みたいな展開ではないけれど、同じぐらい熱い映画です。 スポーツ前のストレッチしながら観ると良いと思う。 あと、クリスチャン・ベール! この人は出てる映画で好きな作品もたくさんあるけれど、正直なところ演技がスゴいとか思ったことはあまり無くて(だいたいメソッドアクターってあんまり好きくない)、でもやっぱりスゴいんだろーなぁということはそのカメレオンぶりで何となくはわかっていましたが、やっぱりスゴいねと痛感。 『Glory & Consequence』 / Ben Harper ![]() ![]() 公開終了してから、もうずいぶん間があいてしまいましたが、映画『ザ・タウン』です。 ベン・アフレックは初監督作の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』がものすごく良かったし、そもそも『グッド・ウィル・ハンティング』が書けるぐらいだし(今回の『ザ・タウン』の出来からすると、『グッド〜』もやっぱりベン・アフレック主導で書かれたのかもねと思ってしまう)、演者よりも裏方のほうが向いてるんだろうなぐらいに感じていたから、監督二作目の『ザ・タウン』では脚本に加え、主演もするということで、裏方に徹しろよ!となんとなく一抹の不安があったけれど、そんなものは余計なお世話でした。 ひじょーに良かった。 そもそも、ボストンを舞台にしている時点で、ベン・アフレックだからこそ描ける何かが、かなりたくさんあるんだろうなと思った。 ボストンを舞台にした犯罪映画はここ10年豊作というイメージがあって、代表格は『ディパーテッド』だろうけど、その空気感(たぶんボストンの持つ閉塞感)では『ミスティック・リバー』が別格で、ストーリーもリメイクものでは出せない重厚感と妙な説得力を持って迫ってくる。そしてその『ミスティック・リバー』の原作者デニス・レヘインの作品をベン・アフレックが脚色・監督し、弟のケイシーを主演に据えたのが『ゴーン・ベイビー・ゴーン』で、この作品、ラジー賞受賞歴のある女たらし役者の初監督作品とは思えない傑作に仕上がっていて、僕かなり好きでした(日本ではDVDスルーというのが何とも期待のなさの現れというかなんというか)。 そして、今回の『ザ・タウン』。ボストン在住のミステリ作家のハメット賞受賞作『強盗こそ、われらが宿命』を脚色した作品で、弟よりもいくらかは華のあるお兄ちゃんが主演したからか、『ゴシップガール』のあいつが出てるからか、ジェレミー・レナーがアカデミーノミネートされたからか、とにかく無事劇場公開されたので、わくわくしながら観に行ってきました。 ベン・アフレック監督、二作目もやっぱり良かった。この監督、これからが楽しみです。 新人監督ベンのフィルモグラフィー2作品の面白さ、これって実はベン・アフレックが犯罪ものに強いのではなく(くどいようですが『グッド〜』を書いてるわけだし)、自らの出自や育った町を愛情と憎しみと皮肉と哀しみの視点で描くことに長けた映画作家だから、胸に迫るしそれこそが魅力なんだと思う。大仰に言うと、ベン・アフレックは、ウディ・アレンやエドワード・バーンズのようなタイプの映画作家なんじゃないだろうか、きっとそうだ、なんて。細々したエピソードや設定を取っ払って骨組みだけ見ると、つまるところ構造は同じだという点においても先達と同じ作風を踏襲しているように思えるし。そういう意味では『グッド・ウィル・ハンティング』と『ザ・タウン』はほとんど同じ展開を見せるしね(←超大雑把解釈)。違いといえば引き止め役だったベン・アフレックが今回は町を出て行く人を演じている点。そこに至って、やっぱり彼も、マット・デイモンのように苦悩しつつも鮮やかに町を出て新たな人生を始める人を演じたかったんだね、というのがよくわかる。(←完全に決めつけてるけど、実際のところは知らん) まあ、とにかく監督ベン・アフレックは要注目です。 ところで、強盗映画ですよー的な予告編のせいなのか、『ザ・タウン』をアクション映画と思ってる人や、実際に観たのにアクション映画としてしか観ることができない人がまれにいるみたいですが、そこまで鈍感な人は、まあそれはそれでいいんじゃないと無視しておいて、町に縛られながらもそこに守られ、そこを憎み、なんとかして逃げ出したいんだけれど、居心地の良さや仲間も捨てられない、そんな複雑な想いと、かなり都合良く展開する良くも悪くもアメリカ映画的な物語を楽しみましょう(何者かになるために故郷を捨ててきた人なら必ず心震えるはず)。 とはいえ、強盗シーンや銃撃シーンも素晴らしいので、結局はクライム・アクション映画なんだけどもね。 『For Boston』 / Dropkick Murphys ![]() “園子温”と聞くと、よみがえる最初の青春の日々(今は7回目ぐらいの青春の日々)。といっても、園子温監督作品のほとんどは、一回しか観たことないし、特別に思い入れがあるわけではないのだけれど。 “園子温”とくれば、『自転車吐息』の“俺”の旗が反射的に思い浮かぶ。その『自転車吐息』の存在は、当時(十代後半)はいつも一緒にいたという印象のジャカルタ移住中の友人から教わり、なんとなくデザインが好きでそのチラシを部屋にずっと貼っていたせいで、“園子温”と聞くと、絵を描くか遊ぶかしかしていなかったその頃のことを思い出す。 そんな青春の“園子温”ですが、最近では感性がオトナになったのか触覚が腐ってしまったのか、楽しいアメリカ映画がイチバン好きになってしまった自分にとっては、園子温作品って、一応観てはいるんだけれどもなんか響かないというか、妙にポエジーな台詞まわしになんとなくめんどくさって思ったりして、かなりの距離感があったんです。けれども、『冷たい熱帯魚』は傑作の匂いがプンプンするし、吹越ラブな友人の映画館でのあまりに良過ぎる反応(残虐シーンを指の間から覗く的な)がとーっても好きなので、激混み覚悟で行ってきました(すみませんね、ずいぶん前の話で)。 その日は平日の昼間だってのに、やっぱり混んでた。 先入観なのかもだけど、園子温観に来る人たちで埋まった劇場は妙なテンションを感じます。 園子温らしい長めの導入に、直接的なシーン以外も全体的にどことなく卑猥というか、艶のある表情を湛えた画面にあっという間に釘付けでした。お待ちかね(待つな!そんなもん)の大好物残虐グロテスクシーンも、思ったよりは少なかったけれどすごく良かったし、終盤やっぱりポエジーな台詞が飛び出すあたりも非常に“らしく”て、観た後はけっこう疲れるぐらいのかなりパワフルな映画で、各所の評判通りの傑作でした。 『悪魔を憐れむ歌』という本にもなっている埼玉愛犬家連続殺人事件を題材に、人間の怖さ、暗部、狂気(と正気)、欲望、それらすべてを濃密に描いた作品ですが、ある程度正常な人には笑えるように(たとえば僕のようにある程度自分の“普通”が自覚できる人ね)、ちゃんとコメディとしての味付けもされていて、かなり笑い声もあがる素敵な劇場空間でした。 今もどこかでかかっているのかは知らんけれど、世界で勝負する日本初の本格的海外征服レーベルSUSHI TYPHOON作品ってこともあるし、映画ファンはぜひとも観に行ったらいいと思うよ。 ついでに、10秒ぐらいのSUSHI TYPHOONプロモムービー(SUSHI TYPHOONのサイトで観れます)も必見。 ところで、マゾ気質を一発で見抜かれる神楽坂恵扮する奥さんの姿を見て、ふと、サディスティックとマゾヒスティックが人間形成の重要な要素のひとつだったとしたらなんて考える。みんながそれを意識して、自分がどちらかを認識し相手がどちらかを理解する世界、なんかコワそうだけれど、そのほうが存外いろんなことがうまくいくのかもなぁ。うん、きっとうまくいくだろうなぁ。 『丸の内サディスティック』 / 椎名林檎 ![]() ![]() ![]() アカデミー賞、『ソーシャル・ネットワーク』はあまり獲れなかったですね。12部門ノミネートの『英国王のスピーチ』も4部門受賞にとどまり、なんとなく賞がばらけている感じが今回のノミネート作品の質の高さの表れのような気がして、封切りが楽しみです。特に『ブラック・スワン』、『ザ・ファイター』、『127時間』、『トゥルー・グリット』の4本が楽しみ。 それではと、こっちはこっちで2010年日本公開作トップ5を。 (プロ並みに大量に観てるわけではないので、ベスト10ではなく5本ぐらいがちょうどいいのです。例えば、 『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』と『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』の二本はまだ観ていなくて、もし観ていたらベスト10には入るだろうけれど、というような“見逃した”映画がたくさんある) 2010年トップ5は、 『ゾンビランド』 『インセプション』 『キック・アス』 『ハート・ロッカー』 『(500)日のサマー』 『白いリボン』 『アウトレイジ』 です。 (あ、7本ある。ま、いっか) 次点は、 『第9地区』 『マイレージ、マイライフ』 (だったら、『ローラーガールズ・ダイアリー』を入れてベスト10にしろよとも思うが、それはそれとして) 『ゾンビランド』は、バカバカしくて最高に楽しかった。タイトルからイメージされるちゃちなホラー映画なんかではまったくなく、わかり易くいうと、異常に楽しい青春ゾンビ映画(←よけいわからん)。ゾンビ映画をほとんど観たことがないらしい新人監督の作品ですが、数多のゾンビ映画研究したうえで、映像テクニックを駆使して、鮮やかな発想の転換でポップな青春コメディに仕立て上げてます。画面がめちゃくちゃカッコいい。タイトルシークエンスのデザインだけでも必見です(ま、ここはデザイン会社が制作してるんですけども)。 脚本書いた人も相当面白い人なんだろうなと感じさせてくれるコネタ連発で爆笑の連続。 ビル・マーレイが本人役で登場するので、80年代を生きた人にはより一層笑えるオーバー30のための一本。 『インセプション』は、真にSFな設定の物語がフィリップ・K・ディックの映画化のような空気感で、もっと踏み込んでハードコアSFの香りすらする硬派なSF映画でした。僕は『インセプション』がアカデミー賞作品賞獲ってもよかったのにと思ってるぐらい大好きな一本。『ダークナイト』に続き濃密な傑作連発で、今ハリウッドではクリストファー・ノーラン最強かも。そしてディカプリオ!昔は特に好きでもなかったけれど、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』あたりからぐんぐんに気になりだして、出る映画出る映画すべてが面白くて(個人的に『シャッター アイランド』は、ん?な演出だったけれど、特にストーリーが。でもディカプリオはやっぱり良かった)、いまや完全にファンです。 『ハート・ロッカー』は我が青春の一本(そしていまだに年に何回かは絶対に観る)『ハートブルー』のキャスリン・ビグロー監督の新作。この人は男前美人なおばさんで、やたらと骨太な映画を撮る人なので、今回の『ハート・ロッカー』は得意中の得意なんじゃないでしょうか。戦争映画だから、テーマとしては反戦とかプロパガンダとかそういう方面で語られることの多い映画で、もちろんそういう側面もあるんだろうけれど、僕のこの映画の印象は全然違っていて、もっとこうなんというか、ハードボイルドもののような人間ドラマって感じ。誤解を恐れずに言うと、あるひとつの世界でしか生きられない男が、その世界にすがりその中でこそ生を感じ自分の存在を噛み締める、その生き様と人間の中毒(みたいなもの)についてのどこかヒロイックなお話。そういう意味では『レスラー』なんかに近い気がするし、これをいろんな味付けでエンターテインすると『ダークナイト』になるんじゃないでしょうか。 『白いリボン』はミヒャエル・ハネケ新作。カンヌでパルム・ドールも獲ったわりにあまり日本ではプロモーションに力が入っていない一本。この作品、これ実は恥を忍んで言うと僕7割も理解できてないんじゃないだろうか。かなりざっくり言うと、ファシズムの形成、忍び寄る、または沸き上がるファシズムの種とその恐怖とはいったいなんなんだろうかということを、とある村で起こる奇妙な事件を通してじっくり丹念に描いていく重い一本。その背景には第一次世界大戦があり、その傷跡があまりない(と認識していた)環境に生まれ、ろくに勉強もしていなかった自分にとっては、俄には理解するのが難しいテーマ。それでも美しいモノクロの画面を通して、重大な問題についての意識を喚起させられるというのは、これも映画のひとつの意味、意義みたいなものだと思うので、必見の一本。観る人が観れば切実な作品。 『アウトレイジ』は北野映画の暴力描写の極北、面目躍如たる一本。北野武はフェリーニみたいな映画撮ってるより、こういう「バカヤロウ」とか「コラ」とか「ブチコロスゾ」なんて言葉が台詞の大半を占めるお話を撮ってるほうが好きです。大好きです。コワいコヒさんと椎名桔平(不敵な笑みで強くてコワい)の壮絶な死に様に震えました。こんな話なら何本でも撮れる、というような意味のことを監督が言っていたので、続編が楽しみ過ぎ。鈴木慶一さんの不穏なサウンドトラックもカッコいいです。 『キック・アス』と『(500)日のサマー』も最高(詳しくは過去記事へ)。 そんな2010年の映画ライフでした。 2011年も面白そうなのがいっぱいあって楽しみです。 ![]() ![]() < 前のページ次のページ >
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