Hell's Ditch
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新潟行く前に少し書きましたが、衝撃のお芝居を観てきました。

長塚圭史演出、『ウィー・トーマス』です。



1993年、アイルランド・イニシュモア島。とある民家。テーブルの上には、血まみれの黒猫。頭部は半分吹き飛んでしまっている。
この家の主・ダニーと、近所に住むデイヴィーが呆然と血まみれの猫の死骸を見つめている。
その猫の名前はウィー・トーマス。
「誰が殺したんだよ?」

ウィー・トーマスの飼い主、ダニーの息子のパドレイクはINLA(アイルランド国民解放軍。IRAから分派した過激派リパブリカン・グループ)の中尉、通称マッド・パドレイク。
どれぐらい“マッド”かというと、父親のダニーでさえ脅えるほど。

ところ変わって北アイルランド。ドラッグの売人を拷問中のパドレイク。
彼のもとに、父親のダニーからウィー・トーマスの具合が“少し”悪いという連絡が入る。
最愛の猫の一大事に、半狂乱状態のパドレイク。
彼は拷問を放り出し、実家へ向かう。
ウィー・トーマスがもう死んでいるとは知らずに……。



そんなお話です。
7月9日に千秋楽を迎えるので、残りは4公演だけですが、ぜひ観てほしいです。チケット余分にとれたら僕も一緒に行きますよ。
あんな強烈な体験はなかなかできない。次の公演まで待てない。
(ここら先は少し内容に触れます。ご注意を)



冒頭、頭の吹っ飛んだ猫の死骸を持ち上げるシーンから、すでに赤い血がとろとろーっと垂れてます。
中盤から後半にかけては流血しまくりです。
肉片とか歯とかが飛び散ってました。
内蔵取り出したり、骨がコキンと音たてて折れたり。

なのに笑っちゃうんです。

ブラックユーモアというのは、かくも残酷でグロテスク。
明らかに何かが欠落した登場人物たちが繰り広げる暴力の、恐ろしいこと恐ろしいこと、そして、滑稽で笑えること。

スプラッタが苦手な人は絶対に最後まで観れないだろうけど、そうじゃない人は絶対に笑わずにはいられません。
つくづく不思議ですね、笑いに対する感覚って。
確実に残酷なのに、大笑いしてるんだから。

そうして笑い終わって、強烈なオチを迎えて気付くこと。
これってアイルランドが舞台になってて、IRAなんていう少し縁遠い人達が出てくるけれど、実は僕たち人間のことを描いてるんだ!うわ、怖い。

『ウィー・トーマス』は否応無しに全てを巻き込むような暴力の連鎖についての風刺でもあるし、ボタンの掛け違いから生まれる憎しみの危険さや滑稽さについての話でもある。
きっかけは僕たちのすぐそばにいくらでもあるという、当たり前の、そして恐ろしいことに気付かされる物語。

人間って怖くて可笑しい。



余談を少し。

『ウィー・トーマス』はテクニカルなところも見所です(ってそんな大袈裟なことや専門的なことは、僕よくわからないんだけどもね。プロの心意気っていうか、そんなようなことです)。

まず美術が素晴しい。
作り込まれてて、とても雰囲気でてます。
それに、死体って見たことないけど、ほんのちょっと人形っぽい気がするんです。特に切り刻んじゃったりすると。そういう意味ではもの凄くリアル。

舞台も素晴しい。
あれだけ血で汚れることを毎日やってる時点で凄いけど、そんなことよりも、暗転して場面転換した時の鮮やかさは目を見張るものがあります。
照明や舞台装置で、限られた空間を最大限に立体的に見せる工夫もされてるし。



あ、最後に木村祐一。
キム兄は“今年の邦画界における最大の収穫”なんて言われてるみたいですが(なんかの雑誌で読んだ)、演劇界でも人気がでそうです。
役者の卵なんて、孵る前に割れちゃうぞ。



『Hell's Ditch』 / The Pogues

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by clyde_8 | 2006-07-06 18:06 | 映画/お芝居
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