Perfect
フェルナンド・メイレレス監督って、TVやCM出身のわりに不器用なのかもしれません、もしかしたら。

出世作『シティ・オブ・ゴッド』は六本木ヒルズのわけわからないフロア構造と相まって(←関係ない。けど、『シティ・オブ・ゴッド』ついでに買い物でもって言ってたのに、イラついてすぐ帰ったのは確かです)、誰が誰だかわからなくなりながらも、興奮したのはよく憶えてます。
とても好きなタイプの映画です(というか、『シティ・オブ・ゴッド』ってみんな好きですよね。あんなに暴力的なのに、嫌悪する人に会ったことがありません)。

『シティ・オブ・ゴッド』から3年、フェルナンド・メイレレスがイギリス映画として撮った最新作『ナイロビの蜂』はジョン・ル・カレ原作。

フェルナンド・メイレレスとジョン・ル・カレって相性悪いような気がしていたんですが(ものすごーく簡単に言うと、作家性の違い。フェルナンド・メイレレスって実はチャラいところもあって、それが“味”なんだと思う。一方のル・カレはチャラさとは無縁な気がする)、ちょっと的中です。ま、このブログは文句を言うところじゃないので、細かくは書かないでおきます(同じく、フェルナンド・メイレレスに物申す!という性格の小悪い人はお会いした時にでも、お話ししましょうネ)。
実際、フェルナンド・メイレレスはインタビューで『ナイロビの蜂』はある部分では依頼されて撮ったものだというような言い方をしているし、もともとはサスペンスやスパイ映画をやろとは思わない、というようなことも言っている。

ただ、映像は相変わらず綺麗だし(ま、映画って映像が綺麗である必要がない場合もあって、そうすると邪魔くさいだけなんですが)、編集も手が込んでて退屈しないし、ジャスティンを演じたレイフ・ファインズになりきって、レイフ・ファインズ視点のみで観るととても素敵な映画です。音楽も良かったです。
間違ってもテッサの気持ちなんて考えないよーに!



なんて言ってますが、実は今回はフェルナンド・メイレレスと対照的だなぁと思ったサム・ライミについて。

『死霊のはらわた』シリーズは言うまでもなく、傑作『XYZマーダーズ』(監督)や傑作『未来は今』(脚本)で見せたチームを組んだコーエン兄弟との相性の良さっぷり、『クイック&デッド』あたりから映画の規模がでかくなっていって、『スパイダーマン』シリーズでは完全にハリウッド超大作なんですが、しっかりサム・ライミ印の作品になってるあたりなんか、ものすごく好きな監督さんなんです。
そんな監督作品はほぼ全て観てるぐらい好きなサム・ライミなんですが、唯一観る気になれなくて観てなかった作品があります。

それは、『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』。

サム・ライミ(だって『死霊のはらわた』でデビューした人だよ!)と野球役者ケビン・コスナー主演の野球がらみの恋愛映画なんて、フェルナンド・メイレレスとジョン・ル・カレ以上に相性悪い気がしません?
僕は、どっかのプロデューサーが野球嫌い(というのはもちろん思い込み)のサム・ライミに頼み込んで、サム・ライミも魔が差して、「まあ、撮ってやるか、ギャラもいいし」ぐらいのいきさつで撮られたハンパなメロドラマぐらいに思ってたんです。
だから公開時には悲しい気持ちでポスターを眺めてただけだし、ビデオやDVDも完全に無視してたんです。

けど、『ナイロビの蜂』を観た時にふと『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』を思い出したんですよね。
作家性の強い監督が依頼されて撮った映画、“おシゴトで撮った映画”っていうことで(本当のところはどうなのか知らないですよ)。
だから、観てみたんです。



なにこれ、すっごい良い映画じゃあないか!!!

シーズン終了間際に引退を勧告されたベテランピッチャーのビリー、最終試合の直前には恋人から別れを告げられる。
ビリーは様々な思いを胸に最終戦のマウンドへ。
マウンド上で、キャッチャーやバッターと会話をするように投げるビリー。
投げながら恋人との思い出を辿り、自身の去就への決心を固め、選手としての偉業を成し遂げようとする。

そんなお話です。
野球があまり好きじゃない僕でさえ、野球って面白いなと感じちゃう瞬間とかあって、ビックリです。普通に感動します。
基本的にピッチャーとキャッチャーが主役のゲームで、『メジャーリーグ』のように各選手バカバカしいぐらいにキャラ立ちしまくったエキサイティングな試合展開じゃないんですが、静かに興奮するんです。
ピッチャーとバッターが対峙する様は誤解を恐れずに言えば、僕も大好き(みんな大好き)な松本大洋さんの描く“闘い”にやや近い雰囲気があります。
そんな試合中に明らかになるんですが、映画の原題の“FOR LOVE OF THE GAME”の意味を知った時は泣きそうになりました。

それと、会話が気が利いていてお洒落なんですよ。さりげなくお洒落です。

そして、ウソみたいだけどサム・ライミらしさもしっかりあるんです。お話の雰囲気を壊すことなく!というか、映画をより良いものにするために、らしさが駆使されている!
身体に穴が空いたりはしないけどね(血は少し出る)。
全体の演出自体は本格派とも言えるぐらい真っ当なんですが、独特のカメラワークや構図で、おおスゴイ!とかカッコいい!とうならせてくれます。
ピッチャーが集中力を高めるためにまわりの世界を隔離するシーンの絶妙なフォーカス具合と音響にはニヤリとさせられました。
映像も綺麗です。色合いも綺麗なんだけど、光がいい感じなんです。試合の終盤で、スタジアムのライトの光が画面上部をオーロラのように帯になって横切るシーンは思わず「あぁ、きれい」と呟いてしまいました。

キャストではケリー・プレストンがとてもチャーミングです。必見です。メイキングでのケリー・プレストンなんて、好きになっちゃうぐらいキュートで美しいです。
『ザ・エージェント』では役柄のせいで全く良い印象がなかったけど、『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』のケリー・プレストンは別れたくないと思わせるのにじゅうぶんの、“リアルな可愛らしさ”です。
ケビン・コスナーもよかったね、しっかり中心に据えてもらい機嫌損ねることなくこんなに良い作品に仕上がったんだから。

完璧です、サム・ライミ。



『Perfect』 / Fairground Attraction
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by clyde_8 | 2006-05-18 18:48 | 映画/お芝居
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