走れ!安兵衛
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興奮のスタンディング・オベーション!
ちょっとこれはスゴイぞ、と僕は打ちのめされてしばらく拍手さえ出来なかったんですが、三谷幸喜さん初の歌舞伎書き下ろし作品『PARCO歌舞伎 決闘!高田馬場』はものすごい盛り上がりで、とにかく面白かった!!

もともと、個人的にはあまり歌舞伎というものに興味はなかったんだけれど、やっぱり三谷幸喜作品とあれば観ないわけにはいかない!というわけで観に行ってきました。
どうせ観るなら少し歌舞伎の勉強をしてから観よう(と同時に“高田馬場の決闘”や“中山安兵衛”についても勉強。昔おシゴトで『忠臣蔵』をやったことがあるので、その時の資料が大いに役立ちました)、ということで人に聞いたり調べたりしてはみたものの、市川高麗蔵さんが嘆いてるように(嘆いてるわけじゃないとは思うけど)、どう考えても“歌舞伎”って伝統芸能、様式美を楽しむ芸術、というイメージ。
それに、実際に歌舞伎を見たこともなくて知識だけを詰め込んでも全くピンとこないので(やっぱりなんでも経験してみるのが一番ですね)、必要最低限のことだけ憶えておくことにして劇場へ。



まずは三谷幸喜作・演出のお芝居を見る時の楽しみのひとつに、開演前の“上演中の注意”があります(プレビュー公演なんかでは本人が登場することもあるしね)。
『オケピ!』初演の時は三谷幸喜が場内アナウンスを担当していて(もちろん録音)、「携帯電話、ポケットベルをお持ちの方は電源をお切りください。PHSをお持ちの方はそろそろ携帯電話に買い替えて下さい」が大ウケしてたし、“上演中の注意”のためだけに客演を呼んで、前説的にやってもらったりとか、毎回趣向を凝らしたものになってるので、今回もしっかり楽しむために少し早めに着席。
今回は歌舞伎独特の口調(あれってなんていうんでしょう?口跡?)で“上演中の注意”をお願いされるというもの。ただ、あくまでも言葉は口語体で(そうじゃないと何言ってるかわからないので、注意する意味がない!)、ところどころに小ネタを挿むというスタイル。
例えば“携帯電話”は“懐中電話”に言い換えられたりといった感じ。
クスクスっと笑わせられて、良い感じにリラックス(芝居ってけっこう緊張するでしょ?観るほうも)。

舞台に目をやると、竹本(台詞の合間などに情景や人物の心理を唄いストーリーを紡ぐ人)や長唄(一言でいうと伴奏曲、三味線音楽)や鳴物(一言でいうとBGMや効果音)の演奏者たちがセットの長屋の屋根の上にいる。通常は上手と下手に分かれてそれぞれに決まった場所があるらしいんだけど、スーパー歌舞伎すら観たことない僕にはそれが歌舞伎らしくないとは全くわからず、ただ、おぉすごいところにいるなぁ、ぐらいに感心。



さて、いざ芝居が始まると、いきなり走る走る。
中山安兵衛に扮するソメソメ(ごめん!市川染五郎さんね。I—I∧I_との間ではソメソメで通ってる)に始まり、次から次へと登場人物が舞台を横切り、跳び、走る、走る。
そこで流れる竹本の歌。
場面はどうやら中山安兵衛が高田馬場へと駆けるシーン。
なぜ中山安兵衛は高田馬場へと走るのか、事の起こりは元禄七年、江戸の往来にて……という具合に物語は始まるのですが、街角のセットが登場する前、まだ市川染五郎さん達が走ってる冒頭のシーンで、既に竹本が唄います。
「こんなのは歌舞伎じゃないと、野暮なことは言わないように」と。
これで僕は安心。
“これは歌舞伎じゃない”と言われてもおかしくないぐらい歌舞伎の形式から逸脱してるんだったら、きっと僕みたいな“様式美を楽しむ”ことがヘタクソな人間にとっては入りやすいだろうし、歌舞伎未経験者としても、先入観がないぶん楽しみやすいんじゃないかな、と。



さあ、いよいよ始まりです。



……もう笑う笑う。
うん。とっても楽しい!
これって、歌舞伎のエッセンスをふんだんに盛り込んだ三谷幸喜の新作コメディですよね、きっと。
ま、スーパー歌舞伎やコクーン歌舞伎を観たことないので、PARCO歌舞伎の親しみやすさがどれぐらい独自のものかわからないけれど、とにかく楽しいです。
基本的には三谷幸喜作・演出のお芝居だから数分に一度笑いが散りばめられて(要するに2時間ちょっとを笑い続けるに近いわけです)、主要キャストには全員しっかり見せ場があって、その上で歌舞伎の楽しさや驚きが盛り込まれてるので、もうね、すごいボリュームです、気分的に。満足感が大きすぎて、観終わった後は、“あー楽しかった”という感想しか残りません。

あー、楽しかった!



そうは言っても印象的なディテールは心に残るわけで、中でも歌舞伎の代表的な様式のひとつらしい“早替わり”、これはスゴイですね!
“早替わり”って1人の役者が素早く違う役に替わることだそうですが(要するにひとり何役もこなす)、本当にいつの間に!?って感じで呆気にとられちゃいました。しかも、後でパンフレットでわかったんですが、観てる間は全然気付かなかった“早替わり”もあったし(まあ、これは僕だけわからなかったのかもしれませんが、完全に別の役者だと思ってた。。。)。

あと、後半の怒濤の展開ね!
もうね、セットもくるくる変わるし、登場人物は走る走る走る。
あんな躍動感溢れる舞台はそうはないんじゃないでしょうか。
笑いながら圧倒されっぱなしでした。
最後の最後では、竹本の唄う歌詞の中に、三谷ファン大喜びの一節が(もちろん僕大喜び)。これから観る人のために歌詞の内容は書きませんが、三谷幸喜&ビリー・ワイルダーファンにはおなじみの一節です(ってゴメン。これはわかっちゃう人にはわかっちゃいますね。ほんとごめんなさい)。



そんな『PARCO歌舞伎 決闘!高田馬場』は市川染五郎さんが自信を持って「これが歌舞伎です」と言ってるように、きっと歌舞伎ファンも満足できる芝居になってるんだと思うし、別に歌舞伎ファンじゃない僕も大興奮だったし、まさに市川染五郎さんが目指した“ジャンルの枠を超えた面白いもの”ですよ!

その証拠にカーテンコールの熱気!
そして、当然のようにダブルコール!!
それでもまだ拍手は鳴り止まず、三たび舞台に登場した一座を出迎えた客席はスタンディング・オベーション!

立ち上がって拍手を送る客席を目にしたソメソメの、驚きながらも満足げでとても嬉しそうな顔が素敵でした。



と、さんざん楽しかった面白かった楽しかった面白かったと言っといてあれなんですけど、例によって『PARCO歌舞伎 決闘!高田馬場』のチケットは売り切れです。でも、当日券の出る可能性もほんの少しだけあるみたいです(2006年W杯の本番のピッチに土肥が立つぐらいの可能性)。
それに、WOWOWで生中継があります!
ま、サッカーと同じで、芝居は劇場で観ないと、面白さ、魅力が60〜70%オフ(当社比)になっちゃうんですが、『PARCO歌舞伎 決闘!高田馬場』はもともと100点満点で150点ぐらいだからテレビでも観ても100点前後です。
大丈夫。



そうそう、もし当日券が何枚か手に入ったら教えて下さい。
あと何回か観たいので、僕もお伴しますから。



『Run Run Run』 / The Velvet Underground
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by clyde_8 | 2006-03-07 18:21 | 映画/お芝居
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