You Really Got Me
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映画って、確実に嫌いなタイプのもの(僕の場合は“動物もの”があまり好きじゃない。動物は好きです)以外は、そんなに面白くないだろうな、なんてわかっていてもとりあえず観てしまいます。それで、ちょっとでも良かったなって思えるところがあると、観てよかったなーなんて思ったりする。
好きな役者の演技でも音楽でも綺麗な女優でもカメラワークでも、何でもいいけど良いなーって思えればそれでいい。

例えば、タイトルバックなんかは映画の魅力のひとつだと思うので、良いタイトルバックだと、それだけでけっこう楽しくなってしまうし。
それに、映画のタイトルバックってだいたい良かったりしませんか?ある程度。というか僕、タイトルバックはわりと何観ても面白く感じます。
あんまり奇をてらってないシンプルなタイトルバックでもけっこう楽しい。
大学受験では映像専攻科も受けた(もちろんそれなりの自信とともに。ということはそれなりのこだわりがある)ぐらいなのに、どうやら僕が楽しく感じる映像のハードルは低いようです。

でもね、実際のところ、映画を観てると良い本編に出会うより良いタイトルバックに出会うことのほうが多いですよ。

最近DVDで観た『ホステージ』なんかもそう。
この映画のタイトルバックは昔のグラフィック・デザイン(あのね、作品集はよく見かけるんですよ、東欧系の人の。あぁ、名前がわからない。。。)あたりからインスパイアされたと見受けられる力強い色面とその立体感がとってもカッコよかった。このタイトルバックを観るだけでもこの映画の価値はある、なんて思いました。興味のある方はぜひ。シンプルなアイデアでとてもインパクトある画面作りをしていたので、グラフィック・デザインとしても参考になります(ま、もとがグラフィック・デザインだったとしたら当たり前なんですけどね)。



そんなわけで、お仕事する時の刺激にもなるから、タイトルバックの作家さんの感性ってとっても好きで、ソウル・バス(『サイコ』が有名ですね。というか、もともとグラフィック・デザイナーです)からランディ・ボールスマイヤー(『ナイト・オン・ザ・プラネット』とか)まで、好きな作家さんだらけなんです。
そして、そんな数多くいる作家さんの中でも、やっぱりカイル・クーパーが大好きです(というかImaginary Forces)。

あまりにも有名な『セブン』(エンドロールが上から下に動くだけであんなに衝撃を感じるなんて!)をはじめ多くの映画でタイトルバックをデザインし、ゲームでは『メタルギアソリッド』シリーズ、CMも様々な業種のものを手がけているので、知ってる人も多いと思うけれど、一時代を築いたうえに今でもトップ・ランナーの感があるカイル・クーパー。その細部へのこだわりと、文字に対する上品な感覚は本当に参考になります。

それからカイル・クーパーの作品は、デザインする時にとても重要で、難しいことのひとつ、“明確な意味、目的を持って要素を選ぶということ”についての最高のお手本でもあります。

カイル・クーパーのつくりだすタイトルバックは、ものすごーくミクロな視点で捉えられた要素を積み上げることでイメージを作り、そこに丁寧にデザインされた文字が調和している美しい世界。そして、映画を観終わった後にわかるのは、タイトルバックで使われている膨大な数のイメージの断片(デザインの要素)、そのすべてが物語を象徴するものだということ。

少し回りくどい言い方になってしまったけれど、『セブン』や『ガタカ』のタイトルバックをじっくり観てみるとよくわかります。
『セブン』のタイトルバックで紙の束が見せる綺麗な陰影、剃刀の刃の冷たく美しい質感、削ぎ落とされる皮膚、そんな画面に絡み付くような文字の不穏さや不快さ。
『ガタカ』のタイトルバックでは青い世界の中を重厚な音をたてて角質、爪、体毛が落ちてくる。そして印象的にあしらわれる文字に込められた意味。
映画を観終わった後にしかわからないぐらいの絶妙なさじ加減で、物語の核心に触れるモチーフをデザインの主な要素にしているんです。
意味のあるモチーフで作品をつくること、これは当たり前のようでなかなか難しいことです(少なくとも僕にとっては)。



カイル・クーパーの影響力は『セブン』のタイトルバック以降、似たような雰囲気を持つ作品が多くつくりだされてることからも、その大きさがわかるけれど、同じようなアプローチをしてカイル・クーパーを凌駕する作家はまだいないようです。

カイル・クーパーのデザイン理念とそれを構成していく上でのセンスはとても真似できるものじゃないけれど、理想のひとつとして追い求めていきたいな、なんて思います。同じデザイナーとして小さな嫉妬とともに。
なんて。



と、堅苦しくデザインがどうこうなんて言ってますが、映画観る時には本編以外にもタイトルバックも存分に楽しんでみては?
タイトルバックってカッコいいのや楽しいのが多いですよー、って話。



『You Really Got Me』 / THE KINKS
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by clyde_8 | 2006-01-22 20:14 | 映画/お芝居
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