退屈しないというのはそれだけで良い映画だ、と思う。
今年、夏のはじめ頃だったと思うけど、『オープン・ウォーター』という映画を観た。
僕はたいがいの映画は楽しく観れるほうだと思うし、実際『オープン・ウォーター』も楽しめた。

夫婦がバカンスでスキューバダイビングに出かける。ダイビングに夢中になってると、ツアーのボートが彼らを置き去りにし、それに気付かずに陸へ戻っていってしまう。
2人はウェットスーツとダイビングの装備だけで沖に取り残される。四方を見渡しても海しか見えず、その海域はサメの生息地として知られていた……。という実際にあった事件を元に作られた遭難映画。
映画自体は人間の心とか愛とかを描こうとしていたし(キスというのは本当に素敵なものだ、と思った)、音楽の合わせ方がちょっとおちゃらけてて好感が持てたけど、そんなにすごく良い映画だったというわけでもない。
プカプカ海に浮いてるだけのシーンなんかは少し退屈かもしれないし。
ま、一部の人にはオススメです(え!?一部って?)。

同じ遭難ものでも『オープン・ウォーター』の海に対して『運命を分けたザイル』は山での遭難事故が題材。
DVDが発売されたので観てみた。
『オープン・ウォーター』はフィクションに近い(というか厳密にはフィクション)けど、こちらは一応ドキュメンタリー。セミドキュメンタリー(あるのか?そんな言葉)というか、遭難シーンは再現VTRのように役者が演じていて、本人達は事故当時を振り返るというかたちでカメラに語りかけるスタイル。
未だ誰も登頂したことのないペルーのアンデス山脈、標高6600mのシウラ・グランデ峰に挑んだ英国の若き登山家ジョーとサイモン。ザイル(登山用のロープ)でお互いを確保しあい登頂を成功させるが、下山時に事故が起こる。
事故からどのようにして生還したかを現在のジョーとサイモンは語り、スクリーンはそれを再現する。

観る前は極限状態での複雑な人間心理や不屈の精神で困難に打ち勝つ若き登山家ってのを想像してたけど、違った。
ザイルの両端でジョーとサイモンがとった行動は納得のいくものだし(もし自分だったとしても同じことをしたと思う)、事故から生還する過程では、不屈の精神というよりはただ生きたい、と願うそれだけが彼らの身体を動かしてるように見えるし、そういう意味ではとってもシンプル。
次々起こる恐ろしい出来事もあっさりと描かれていて、そういうことが当たり前のように描かれることで山の恐さを痛感する。

無闇にストーリーを盛り上げようとせずに、シンプルな音楽と、しっかりと撮られた映像とでテンポ良く事故とその前後を綴っていくので退屈しない、引き込まれる。
うん、結局これが大事なんだと思う、“退屈しない、引き込まれる”ってのが。

山にも登山にも何の興味もない僕が(雪山なんてむしろ嫌悪するぐらいだ)、劇場ではなくDVDで観たにも関わらず、ぐーっと引き込まれた。

なんとなしに暇つぶしに観ると充実した暇つぶしができるし、観ようによっちゃあ人生を考えることもできるし、いろんな人にオススメです。
DVDだと特典映像に後日談があります。

後日談を観てちょっと面白いなと思ったのが、ザイルの両端でジョーとサイモンは登山家としてではなく人間として行動したけれど、よく考えると登山家としてとるべき行動をとっていても同じ結果になっただろうなってこと。ここでどちらかが登山家として行動し、どちらかが人間として行動してたら、ややこしい結果になってただろうな、なんて思う。そう、彼ら二人が同じ考えでいたことが一番の奇跡かもしれない。


面白い映画ってまだまだいっぱいあるんだなぁ。
さて、今日は何を観ようか。

あ、そうそう、余談だけど、僕は邦題に込められた意味ってのが気になる質で、『運命を分けたザイル』もどういう意味だろう?なんて考えながら観た。
途中でこの邦題は失敗だなと思ったけど、観終わってあらためて考えるとちょっといいかも、と思い直した。ただの好みですが。
邦題ってのもなかなか難しい。

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by clyde_8 | 2005-09-20 19:09 | 映画/お芝居
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