時さえ忘れて
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映画と同じく世の中には面白い本がたくさんあって、いい作品に出会うと、その作者なり翻訳者なり、またはその分野の他の名作なりを発見して、芋づる式に読みたい本が次々に湧いてくる。そうすると本棚には未読の本が山積していく一方なので、なんとかペースを早めようと、いつの頃からか三冊を同時に読んでいくことにしています。純文学作品(基準は自分で勝手に決めてますけども)を一冊、娯楽・大衆小説(ミステリやホラーが多くなりますね)を一冊、エッセイ・評論や自伝・伝記やノンフィクション作品を一冊という感じで。例えば、今は村上春樹『羊をめぐる冒険』、スティーブン・キングの昔の短編集、菊地成孔『ユングのサウンドトラック』の三冊。『羊をめぐる冒険』と『ユングのサウンドトラック』は何度目かの再読。ということは結局、積読本を減らすことにはなっていないというわけです。これも映画と同じですね。観たいやつはたくさんあるのに、今日もまた『ロンドン・キルズ・ミー』観てしまったりして。
映画観たり本読んだりするため用に、あと5時間ぐらいプラスして一日29時間(キリ悪い)ってことになったらどんなに楽しいか。そうすれば、この愛読書『ユングのサウンドトラック』も毎日だって読むことができるしね。

この本はジャズマン・菊地成孔さん初の映画本で、(一応)映画と映画音楽という見地からさまざまな映画(といってもやっぱりゴダールの比重が大です)について書かれたエッセイ集。映画少年でもあった彼の映画愛のなせる業なのか、観たことのない映画について書かれていてもとても面白く読ませるし、その映画を観たくさせる語り口、加えてそこから漂う読んでる自分まで知能指数が上がったんじゃないかと錯覚してしまうほどの博学かつ聡明っぷりはさすがの一言です。それに、比較的カジュアルにまとめられた感のある『ユングのサウンドトラック』は文筆家としても素晴らしい作品がたくさんある彼の著書の中では格段にわかり易い。これはとても重要ですよね。といっても、あまりの造詣の深さと見立ての飛躍に置いていかれることもしばしばですが、だからこそ何度も読んで楽しめる一冊であるとも言えます。
ゴダール、トリュフォー、フェリーニに始まり、イーストウッド、リンチ、アレン、タランティーノ、北野武、松本人志(この他にも多数)という作家性の高い監督から、『ハウルの動く城』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『セックス・アンド・ザ・シティ』(この他にも多数)というあらゆる人に馴染み深い作品まで、本当にいろんな映画について書かれているので、すべての映画ファン必読です。

もちろん、読書ファン(そんな言葉あるのかな)にもおすすめ。
まえがきからいきなり『大日本人』と『気狂いピエロ』を並べ、その共通点を看破し、我が国のタブーに触れながら映画監督としての松本人志を論じるという、非常にエキサイティングな読書体験が待ってますよ。



『時さえ忘れて』 / 菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール
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by clyde_8 | 2010-12-15 12:24 | 読書
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